大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和56年(行ツ)173号 判決

東京都新宿区左門町二番地二

上告人

長谷川吉雄

右訴訟代理人弁護士

堀川多門

東京都新宿区三栄町二四番地

被上告人

四谷税務署長

田代茂

右指定代理人

古川二

右当事者間の東京高等裁判所昭和五五年(行コ)第四一号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和五六年七月一五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づき原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木戸口久治 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡満彦)

(昭和五六年(行ツ)第一七三号 上告人 長谷川吉雄)

上告人の上告理由

(一) この事件は弁護士堀川多門氏に上告を依頼してあったものですがこの度突然の病気にて新宿区河田町所在の女子医大病院の心蔵センター一〇二二号室に目下入院加療中につき、止むを得ず上告人自身が作成し提出致しますので、御見苦しく亦あらゆる点で不備だらけと思いますが、どうしても上告せざれば得ない心情で作りましたので悪しからず御詫び申し上げます。

(二) 近所の人一〇〇人が一〇〇人廻りの人の全員が長谷川は事業に失敗した、ために今まで住んでいた土地と家を失った。あのままでは個人保証をしていたために債権者に競売される事になったので、止むを得ず家をこわし、土地を処分して金銭を作り債務を支払ったのであります。事業に失敗さえしなければあそこには(新宿区四谷三丁目一番地九号と十号の土地で新宿通りに所在)七・八階建の貸しビルが建ち(延べ面積約二二〇坪月収約二〇〇万円年収にして二、四〇〇万円の売上げが見込まれ、但し榎本サト等と分けるので、実数は1/2となります。)やがては小さい乍らも土地とビルを持ちこれだけでも立派に社会生活が続けられたものをと私を見つめる周囲の人(住民)のすべてが、えらい損失をしたものだと云って居ります。

(三) 然るに私は当時百万電気の代表取締役会長であり、榎本サト氏が代表取締役社長のため会社の権利も義務もお互に1/2づつ持って居り、その上両者とも個人保証をしていたため百万電気の倒産に依り、私分の債務が金壱億七拾参万壱千参拾九円余が発生しこの弁済を昭和四八年と翌昭和四九年の二ケ年に亘り行ったわけであります。従ってここで事実上の損失が発生したわけであります。

(四) 他方においては、昭和四十年頃より個人で営業をしていた不動産業を昭和四八年二月三日付でかねて申請中の法人の有限会社長谷川不動産に対して営業許可が降りたので同時に個人の長谷川不動産を廃棄し同一の人間が個人と法人の二つで営業を行う事は、宅建業法違反となり絶対に出来ないので法人の有限会社長谷川不動産(以下(有)長谷川不動産とする)として建売業を主として営業を行っていたわけであります。

(五) 不動産の営業を個人から法人に切り換えたのは建売業で高額の金銭を動かし、高額の所得が発生した時に、所得が累進課税の税制では個人営業より法人組織の営業の方が有利であると聞いて居りましたし、亦営業の益々の発展を願うためでありました。

(六) 次に税務署は云う、個人と法人とは人格が違うから、法人の所得益でも損失でも個人の所得と合算して計算することは出来ないと云うが、これは当然の事として吾々もうたがう余地のないところである。

(七) 然し乍ら法人の債務に対して個人が保証をしている場合には、この見方は全然かわって来るべきであり、亦変らなければ真実と違うことになる、個人保証とは法人の債務に対して個人が責任をとることであり、法人で発生した債務を個人が引きうけることであり、この点では法人と個人は切っても切れない結び付けの態勢にあり、この事実は万人がみとめているところである。従って法人で発生した債務についてはその損失を支払うために個人の財産を処分し、へらしてもその損失をうめ合わせしなければならない。即ち法人の債務の肩替り行為であり法人と個人といかに人格がちがっていても(六)の如くあっても(七)の説明により、個人保証をしている以上、法人の損失と、個人の利益と合算してすなわち通算されるべき運命にありこれ程の深い関係にあるものを法人と個人の財産の変動に結びつかないと云うなれば、もはやとうてい普通人の常識では全然解釈が出来なく、云うことばすらみつからない。

(八) 私は昭和二八年頃にNHK(日本放送協会)のテレビ技術者講習を受け昭和三〇年十月街では今だにテレビというものが珍らしい頃にすでにミリオン電気と云う名称で電気屋の現金安売屋を始め、個人で営業を開始したわけであり、多くのお客様より支持をうけ、昭和四八年頃には新宿区だけのお得意様名簿にはすでに壱万弐千名程の御得意様がありました。

(九) 但し昭和四〇年四月にミリオン電気の個人営業を法人の株式会社百万電気(通称はいぜんとしてミリオン電気)に組織替をして家庭電化製品の販売や修理を業としていたわけであり以下は(3)に述べたようになったわけであります。

(十) 倒産後の今でも多くの人にミリオンの社長と呼ばれる事も多く、倒産当時は名目は会長職でありましたが、このようにいかに法人の百万電気と個人の長谷川すなわち私との結びつきが深いかを云いたくて、色々な事点でもすでにのべてある筈です。

(十一) 私の昭和四八年度の所得は不動産業に依る所得ではなく、不動産の法人(有)長谷川不動産の会社役員としての給料所得と、同じく百万電気からの給料所得と倉庫料や貸し事ム所として(有)長谷川不動産に貸していた貸事ム所の家賃の合計等であり、

(十二) この事は突然に多額の債務が発生し(三)に記載昭和四八年と翌昭和四九年の二ケ年は勿論の事、その後一・二年間は魂のぬけた人間みたいなものでその后ようやく、あきらめと云うわけかいくらかまともの人間になってきたわけですが、この時点に提出した納税の確定申告に対して、その后税務署の調査官が来て私が何んと申し上げてもきき入れられず只一方的に色々の数字をかえて行き、特に経費の項などはずたずたに変更して行きました。然し乍ら私は、昭和四八年度には私が実際に損をし、財産をへらした額の方が私自身の収入した実際額より何倍かも多く、

(十三) 従って、ある年のすべての財産上の総合計が収入よりも支出の方が多く即ち所得の増加より減少の方が多いときは所得税と名のつく税金は加せられる理由はない筈(絶対にあってはならない)

(十四) この私に対して加せられた所得税は、何かの間違いか或いは私に対して憎しみをもっている誰かが作意的に為したる仕わざとしか思われず、

(十五) 税の公平性を無視した暴キヨであり、国民の生命と財産の公正さを守る憲法に違反する事でありあえて上告をし、とりとめのない拙文、拙筆ではありますが、上告理由書として、提出する次第であります。 以上

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